活動レポートReport

医療的ケア児を支える地域づくりフォーラム開催

2019.10.14

※こちらの活動は、2023年3月以前に北良(株)のグループ会社、岩手電力(株)が行った活動です。2023年4月以降は、弊社にて引き続き社会貢献活動を継続していきます。


2019年10月14日(月・祝)盛岡市アイーナにて、
「医療的ケア児を支える地域づくりフォーラム」を開催しました。

医療的なケアを日常的に必要とする子供達、そして成人になった方、
医療的ケアが不要になっても日常生活に介助、サポートが必要な方、
そして、そのご家族のことを地域でもっと支えていきたい。

そのために、医療、介護、教育、各種の制度や日常困っていることなど、現状の課題を明らかにして、家族の声を地域の関係者が皆で聴く。

解決すべきこと、取り組むべきことを共有することを目的とし、開催されました。

今回講演をお願いしたのは、
岐阜県総合医療センター新生児内科 寺澤大祐先生、国立成育医療研究センター医療型短期入所施設 もみじの家 ハウスマネージャー 内多勝康さんです。

講演全体の進行役には、岩手日報社の論説委員の黒田大介さんをお招きし、本イベントの実行委員長である小笠原綾子さんと共に、進めて頂きました。

寺澤大祐先生の講演では、

ひと昔前では救えなかった子供の命が、現代の医療では救うことが出来る。
ただ、「救ったいのちを、救いっぱなしにしない」ことが重要だと、講演を通して、強いメッセージを発信していらっしゃいました。

またそうした状況の家族にかかる負担についても、数値を合わせてご説明頂きました。

小児在宅医療において、介護しているのは約94%が母親で、交代できる人がいないケースは25%以上になるそうです。
そのため介護者の負担は大きく、睡眠時間は医療依存度が高いほど少なくなる現実があります。

軽度重心の親の60%が、睡眠時間6~7時間なのに対し、超・準超重心の親は60%が、4~5時間睡眠という実態になっており、さらに短時間睡眠を重ねているのが全体の70%とのことです。
(岐阜県庁HP「岐阜県在宅重症心身障がい児等実態調査の調査結果より)

こういった状況を踏まえ寺澤先生は、少しでもママたちの介護負担を減らしたい、少しでも生活の質が上がることをしてあげたいと考え、様々な取り組みや提言を行っています。

寺澤先生が拠点をおく、岐阜県の小児・障がい児者医療の支援施策は「6本柱」で成り立っているそうです。

1.医療・福祉・人材の育成・確保
2.多職種連携・普及啓発
3.レスパイト支援
4.入所施設の整備
5.施策立案調査
6.家族支援

各項目で、これまで行われてきた県や医療機関などとの連携施策が数多くありました。
具体的なこれまでの取り組みとしては、

医療・福祉・人材の育成・確保のために
「岐阜大学医学部 障がい児者医療学寄付講座」の設置(2014年~)や「小児・障がい児者リハビリテーション専門研修」(2016年~)を実施。

多職種連携・普及啓発のために、興味のある人ならだれでも参加できる、「岐阜県小児在宅医療研究会」(2013年~)の実施などがあげられました。

そして寺澤先生はこれからも、以下のことを実現させるために活動を続けていくそうです。

・成人科との連携
・教育との連携
・持続・発展型事業の創出
・終了する事業についての振り返り
・家族だけではない、社会と大人の意識の改革

2人目の講演者である内多勝康さんは、以前はNHKアナウンサーとして活躍されていました。

現在ご自身がハウスマネージャーを務めている、もみじの家(東京都世田谷区)は、在宅で医療的ケアを受けている子どもと家族を支える短期入所施設です。

理念は「重い病気を持つ子どもと家族のひとり一人がその人らしく生きることができる社会を創る」。
ミッションは「重い病気を持つ子どもと家族に対する新しい支援のしくみを研究開発し、全国に広める」です。

寺澤先生と同様、「小児医療の進歩により救命率が上がった一方で、常時医療ケアの必要な子どもの数は増え続けている」ことを前提とした上で、実際に重い病気を持つ子どもと、その家族の悩みを取り上げていました。

「もっと外で遊びたい、友達がほしい」という子どもの悩み。
「病気の子どもが優先されるため、我慢することが多い」という兄弟・姉妹の悩み。
そして「24時間365日続く介護の為、睡眠時間が短い」「地域の中で孤立してしまいがち」という親の悩み。

それらを少しでも軽減するため、もみじの家では24時間看護師が医療的ケアを行う環境を整えています。
日中活動や生活解除でも手厚いケアを提供し、家族が子どもを預け、医療的ケアから解放される時間をつくるサポートを行っています。

今後の課題としては、もみじの家を運営するための経費捻出について、現在の制度と向き合いながらどう解決していくのかを模索していく点ということでした。

お二人の講演を聴いた参加者からは、

「どんなに障がいが重くても、勝手にあきらめない、テクノロジーの活用が希望になることを教えていただきました。」
「重い障がいの人たちの暮らしを医療面から支える仕組を確立されるまでにご尽力されたお話に胸があつくなりました。」

という、嬉しい感想のお声を頂きました。

フォーラムには医療、行政、福祉、教育など子ども支援に関係する多分野から、また議員の方や当事者のご家族など予想以上の参加人数となり、この問題への関心の高さを感じました。

今回、参加者に記入頂いたアンケートの内容は全て、いわてチルドレンズヘルスケア連絡会議に小笠原実行委員長より報告させて頂き、今後、岩手県や県内の医療機関、福祉、教育、子育て支援などの施策に反映させていけるよう活動して参ります。

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