笠井 今回のカンファレンスでは、災害時に実際に現場に入って、困難を乗り越えながら支援活動をされているお三方に講師をお願いしました。このような方々と参加者の皆さんを繋ぐことで、一歩前に踏み出すためのヒントを共有したいと考えています。
最後に、この先どのように考え、行動していくかについてディスカッションを行いたいと思います。
テーマ①
能登半島地震と日本の未来
笠井 日本の人口減少や高齢化が進む中、今回の能登半島地震での支援活動を通じて、日本の未来にどんなことが起きると考えていますか?
藤田氏 今の日本では、消防に対する厳しい声が一部ではありますが、全体的には消防は国民からは信頼されている状態です。しかし、他の先進国では過去に消防に対する厳しい目線があり、それを機に消防が大きく変わった例もあります。能登半島地震の対応でも様々な課題が見えてきましたので、これから日本でも消防に対する厳しい目線が向けられ、そこで消防が大きく変わる時が来るのではないかと思います。
前田氏 WOTAでは、災害対策と併せて過疎対策にも取り組んでおり、この3、4年で47都道府県の過疎地域に伺ってきました。過疎対策と災害対策が日本のどの地域でも共通のテーマになるはずだと考えていますが、そこにもう1つ必要なことは、それらをどうやって産業につなげていくか、ということだと思っています。今、水の分野では各地に管工業者がいたり、浄化槽の管理をしている業者がいたりして地域の上下水道を守っていますが、これが少しずつ減っていくと人手が足りなくなり、1つの事業者が電気、水道、住宅、消防、防災などの事業を総合的にやっていくようにしていかないと回らなくなるのではないでしょうか。また、そういったベーシックな分野を守っている方々の付加価値をどうやって上げていくかも大事だと思っています。

野口氏 能登に限らずですが、災害支援に入ると毎回感じるのが、避難所を運営している人たちが何からやればいいのかとあたふたしていることです。これだけ毎年災害を繰り返している中で、毎回あたふたするということは、リアルな備えができていなかったということだと思います。また、能登でも自治体によって避難所の環境に大きな格差がありました。海外の難民キャンプで活動してきた有名な医者の方がおっしゃるには、日本の避難所はソマリアの難民キャンプ以下の環境とのことです。海外では「スフィア基準」という基準があり、これに適合するように難民キャンプを設置することに決まっていますが、日本ではこのような基準が無いため、避難所の環境が整っていません。私は、日本の災害をイメージして、日本の国民性に合った日本版のスフィア基準を作るべきと考えます。また、避難所の運営は自治体が行いますが、被災地では自治体職員も疲弊しているため、他県から大量に職員を派遣して避難所運営を支援するようなルール作りも必要ではないでしょうか。
前田氏 海外では、避難所の環境が悪い状態が続くと暴動が起きたりして無秩序な状態になってしまいますが、日本では、避難所の環境が悪くても秩序が保たれています。これは日本の美点ではある一方で、避難所の環境に対して求める基準が下がってしまうことは避けたいですし、災害からの学びを踏まえて、基準を作っていくとこは必要だと思います。また、次の世代のためにも、都度改善していく動きは無くてはならないものでと感じています。
野口氏 未来ということに関してですが、今、子どもたちが自然体験する機会が少なくなっています。子どもたちは自然体験を通じて、ちょっとしたピンチを経験し、それを乗り越えるなかで生きる力を身に着けていきます。これが、いざ何かあったときに役に立ちます。「災害に強いまちづくり」は当然ですが、「災害に強い人づくり」も重要ですね。

テーマ②
社会課題の解決に必要な力
笠井 社会課題の解決には大きな力が必要です。活動していく中で、壁にぶつかったときにどのような方法で乗り越えていくべきでしょうか?
藤田氏 一般的に、災害時にボランティアを受け入れるのは社会福祉協議会ですが、それだけを専門に行っている機関ではありません。また、どの公的機関も職員数は減少しています。
一方で、ボランティア活動に熱心に取り組む人はたくさんいて、公的機関以外でもNPOなどの形で活発に活動しています。今後、災害支援を行うNPOやボランティア団体の情報を国などが事前に収集し、どういうことができるかを事前に把握することで、災害時に速やかに役割分担ができ、支援に参加したい人たちの力を活用することができるようになるのではないでしょうか。
前田氏 たいていのことは、「まず、ちょっとやってみる」ことで前に進むと考えています。水問題の解決においても、まずは試作品を作り、実際に避難所に持ち込んで使っていただき、意見を集約し改善していく。こうした動きを1年ほど続ければ、問題に対して、どうアプローチすれば解決できるか、が見えてくると思います。
野口氏 私は全国数か所の自治体と災害協定を結んでいます。今回の能登半島地震では、このような協定を結んでいる自治体が被災地の自治体と交渉して支援を申し入れ、私はテント村の運営に専念するという役割分担が重要でした。それ以外にもお医者様や様々な企業と連携しており、このような連携のネットワークを広げていくことが大切だと思っています。
笠井 野口さんも前田さんも、岩手に「ゆかり」ができましたので、今後、岩手のいろいろな課題解決に力をお貸しいただければと思いますが、皆さんいかがでしょうか?(会場から拍手)
野口氏 今回登壇したメンバーは異なる分野で活動しているので、このメンバーで災害協定を結んだらとても強いと思います。
笠井 今回は、災害という大きなテーマで、現場で課題解決に取り組んでいる人たちとお話をしてまいりました。ご来場の皆さんも、「こんな課題がある」とか、逆に「こういうことだったら力を貸せる」というようなことがありましたら、一緒に繋がり、今から地域を変えていって、幸せな未来を目指していければと思います。本日は誠にありがとうございました。
